
太陽光発電で発電した電力は、20年間売ることができると聞くけど、そもそも太陽光パネルって20年ももつの?
そんな疑問を感じられたとしても無理はありません。
一般の家電製品であれば、10年間で故障して買い替えるのが普通ですから。
しかし実際には20年以上も元気に稼働している太陽光発電所が、国内にはいくつかあります。
太陽光パネルは家電などと違い、モーターのような可動部がなく摩耗や故障が少ないためです。
とはいえ、トラブルはゼロではありませんし、経年劣化は避けられません。年々徐々に発電量は落ちていきます。
ここで気になるのはどれだけ落ちるかです。それはメーカーやタイプによっても異なりますのでいくつかの機関の調査結果をご紹介していきます。
また、メンテナンスすることで、長持ちさせることが可能です。メンテナンスのやり方などについても説明していきます。
この記事で太陽光パネルの寿命について詳しく知り、太陽光発電投資の1歩を踏み出していきましょう!
目次
1 太陽光パネルの寿命は20~30年
太陽光発電が一気に広まったのは、2011年の東日本大震災後です。まだ10年もたっていないのに、どうして寿命が分かるの? と思われるかもしれませんが、日本で太陽光発電の実用化が始まったのは1980年代です。当時の設備がまだ稼働しているうえ、技術は格段に向上していますから、一般的に太陽光パネルの寿命は20~30年といわれているのです。
1-1 法定耐用年数と太陽光パネルの寿命
太陽光パネルの寿命は17年、そんなことを聞いた人もあるかもしれません。でもこれは、17年しかもたないという意味ではありません。
家にしても機械にしても、年を経るごとに資産としての価値が落ちてきます。それを減価償却といいますが、そこで考慮されるのが耐用年数です。
設備資産の耐用年数は財務省の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に定められており、太陽光パネルは17年となっています。これを法定耐用年数といい、「17年説」の根拠になっているのです。しかも、この分類では、「その他の設備」というカテゴリーに入っています。つまり、企業会計や税法上、どこかに位置付けなくてはならないので、便宜上、17年にしたというのが正確なところでしょう。
一方、太陽光パネルの寿命が20~30年といわれている背景には、実績があります。それについては次項で具体例をあげて説明しますが、今や、25年保証も出てきています。メーカーが、損をする保証を付けるはずがありません。つまり、20~30年というのは、メーカーが〝保険〟をかけた堅い数字と言っても過言ではないでしょう。
パナソニック http://sumai.panasonic.jp/solar/reason03/index.html
京セラ https://www.kyocera.co.jp/solar/pvh/features/4quality/products.html
1-2 実際に30年ほど稼働している発電所がある
太陽光発電は1984年には融資制度がスタートし、92年には売電も可能になって、第一次のブームが起こりました。2012年に固定価格買い取り制度(FIT)ができて、大規模発電所の建設ラッシュが続いています。
このため、実証的に太陽光パネルの寿命を導き出すには、まだしばらく時間がかかるでしょう。ただ、ごく初期に設置された施設の中で、現在も活躍しているものがあるのは心強い限りです。
長寿命の代表的な施設が次の2つです。
≪京セラ佐倉ソーラーエネルギーセンター(千葉県)≫
https://www.kyocera.co.jp/topics/2009/0904_isbi.html
1984年に同センターを開設すると同時に、屋根据え付け型の太陽光発電装置を設置。出力43kw。現在も発電を続けている国内の大型太陽光発電システムでは最も古いと推定されています。25年目に行った計測で、出力低下率は9.6%でした。
≪シャープ 壷阪寺(奈良県)≫
http://www.sharp.co.jp/business/solar/point/tough.html
1983年設置。1.2kw。住職の依頼によって観音石造の照明用に設置され、現在も稼働中です。民間では最古と言われ、2011年に行った性能評価試験では、太陽光パネルの出力低下は6.43%にとどまっていました。
また、元三洋電機(現パナソニック)社長の桑野幸徳さんが1992年に、住宅用としては初めて自宅屋根に取り付けた太陽光発電システムは、現在も順調に稼働しています。
2 太陽光パネルは年々劣化していく
太陽光パネルも工業製品ですし、自然にさらされている以上、残念ながら経年劣化を防ぐことはできません。各メーカーや研究機関の実証試験でも出力低下が認められていますが、パネルの種類によって劣化率に差があります。
2-1 太陽光パネルはなぜ劣化するのか
太陽光パネルの劣化の原因には、次のようなものがあります。
≪配線トラブル≫
配線は太陽光にさらされているうえ、1年を通せば寒暖の差も大きく、皮膜が劣化したり傷がついたりします。すると、雨水などがしみこんで、中の銅線が腐食して電気が通らなくなります。断線する恐れもあります。
≪層間剥離≫
多湿の日本で警戒しなければならないのが水です。太陽光パネルは、表面ガラスと発電素子であるセルとの間に水分が入り込むと、セルの周りの合成樹脂がはがれることがあります。これが層間剥離です。その部分は表面の色が変わって見えますのですぐわかります。層間剥離が起きると出力が低下し、火災が起きる恐れもありますので、セルを取り換えなければなりません。
≪PID現象≫
PIDとはPotential Induced Degradationの略で、高電圧下に温度や湿度など特殊な条件が重なり、電流が本来は流れることのないガラスやバックシートに流れて破壊し、絶縁が壊れる現象です。ヨーロッパの太陽光発電先進国で、特に電圧の高い大規模な産業用発電装置に起きて問題となりましたが、現在では対策が施され、ほとんど起こらないようになりました。
≪ホットスポット≫
太陽光パネルの異常発熱を指します。パネルの密閉が不十分で、水分が内部に入り込んだり、鳥のふんや落ち葉がパネルに付着して影をつくったりしたときに起こります。太陽光パネル内部に使われている合成樹脂の破損や火災につながります。
≪ガラスの汚れと劣化≫
パネルのガラス面は、鳥のふんのほか黄砂や大気中の粉塵などによっても汚れます。水道水で洗った際は、残留カルキにも気を付けなければなりません。
≪製造・施工不良≫
製造時にごく小さなひびが入るマイクロクラックやフレームの破損、施工時に取り付け強度が不足するなどしても、太陽光パネルの寿命に影響が出ます。
2-2 劣化率はどれくらい?
先ほど挙げた異常劣化と呼ばれるトラブルは、年を経るごとに発生のリスクが高まるのは確かです。
しかし必ず起こるものではなく、多くは定期的に点検を続けていれば防げるか、あるいは大事に至る前に改善が可能です。
ただし、ガラス面の汚れや変色による太陽光透過率の低下や、高温にさらされ続けることによる機器の劣化などに伴う発電効率の低下は避けられません。
こうした自然劣化ではどれくらい出力が低下するのでしょうか。残念ながら、長期にわたる実証的なデータや最近の試験結果は見当たらないのですが、いくつかの事例を紹介しましょう。
・年間発電量低下率
上の表は、太陽光発電関係企業の調査や公的な資料に登場した、1年間の発電量の低下率になります。
・NTTファシリティーズは、各社のパネルを使って多くの大規模太陽光発電施設を建設しており、データは2013年にまとめたものです。
・2つ目は、太陽光発電設備のメーカーでつくる太陽光発電協会が、2012年に経済産業省の調達価格等検討委員会に提出した要望書で明らかにした数字です。
http://www.jpea.gr.jp/document/handout/index.html
・水産庁の数字は、2014年に策定した「漁港のエコ化方針」の添付資料に記載されたものですが、設備投資する際の目安を表したもので、必ずしも実態をそのまま反映したものではないと思われます。
http://www.jfa.maff.go.jp/test/keikaku/saiseikanouenerugi.html
・佐倉ソーラーエネルギーセンターと壷阪寺の数字は、先に紹介したデータを年率に換算したものです。
https://www.kyocera.co.jp/solar/es/features/long-term/index.html
http://www.sharp.co.jp/business/solar/point/tough.html
これらを総合すると、設置20年後の低下率は5~10%、悪くても10数%とみるのが妥当な数値です。
ここで一つ指摘しておかなければならないのが「寿命」についてです。冒頭、太陽光パネルの寿命は20~30年と言いましたが、必ずしも正確ではありません。
太陽電池そのものは、卓上電卓を考えれば分かるように、何十年たっても使えるものです。
ここで問題なのは劣化による発電量の低下です。発電量が少なくなれば収益減少に直結するので、特に事業として取り組む場合、劣化率を考慮しなければなりません。
2-3 メーカーの出力保証で劣化率を確認しよう
一般的な家電製品と同じように、太陽光パネルにもメーカーによる保証が付いています。その保証も2種類あります。製品保証と出力保証です。
製品保証は他の家電と同様、設置後一定期間に不具合が生じた場合、無償で修理するというものです。多くのメーカーは10~15年になっています。
出力保証はこれまで述べてきた発電効率の低下に対する〝保険〟のようなもので、どの機器にも〇〇%と明示されており、これを下回るとメーカーが修理や取り換えに応じてくれます。シャープなどは製品保証と出力保証を「丸ごと保証」しています。
主要メーカーの出力保証は以下の通りです。
この表で、例えばシャープの場合、公称下限値である90%に対する率ですから、10年までは81%、11~15年は76.5%になります。
※シャープの一部製品には20年保証があります。
※ジンコとハンファQセルズは、ホームページでも公称最大出力比か公称下限値比かの説明がありません。また、ハンファQセルズの場合、25年目は82.6%になります。
出力保証は、年数と補償対象となる劣化率がポイントです!
また、どの太陽光パネルを選べかいいか分からない人は以下の記事が参考になります。
3 太陽光パネルを長持ちさせるのはメンテナンス
太陽光パネルは劣化する。投資事業として考えるなら、メンテナンスは必須です。劣化を遅らせる、あるいは被害を小さく食い止めるのに大切なのが、点検による異常の早期発見とメンテナンスです。自分でもできますので、ぜひ取り組みましょう!
3-1 メンテナンスは義務化されている
2017年、再生可能エネルギー特別措置法の改正により、設備の保守・点検と発電量の維持に努めることが義務化されました。また、既存の事業主に対しても適用されます。
メンテナンスは当然、発電量低下を抑えるために行います。直流電力を交流電力に変えるパワーコンディショナーや分電盤など周辺機器のメンテナンスは業者に頼るしかないかもしれませんが、太陽光パネルは個人でも比較的容易に保守・点検ができます。
簡単にできて重要なのが目視確認です。ガラス面の変色や汚れだけでなく、架台の腐食やネジの緩みがないかなどについても点検しましょう。
太陽光発電事業の拡大とともに、ユニークで新しいメンテナンスの方法も生まれてきました。ドローンを使った目視確認やロボットによる洗浄などのほか、大規模な発電所ではヒツジを放って除草するところまで出てきました。雑草は、花粉によるパネルの汚れや鳥害、虫害を招きやすいからです。
ご自分でできないメンテナンスもありますので、その際は太陽光発電ムラにお問い合わせください。
一括支払いから、月々5800円などのパックも取り揃えています。詳細は以下のURLをクリックしてください。
https://ichiba.solar-club.jp/products/list.php?category_id=57
また、メンテナンスの選び方についてはこちらの記事が参考になります。
3-2 実用的な監視装置で毎日チェックしよう
遠い場所に発電所をお持ちの方も結構いらっしゃいます。その場合発電所の様子を見に行こうと思ってもなかなか難しくなります。
そのような場合に、最も効率的なのが遠隔監視です。
遠隔監視は、太陽光パネルだけでなく周辺機器の異常も感知してくれます。発電量をモニタリングできる簡易なものは、太陽光発電所を設置した際に、導入します。
しかし、毎日しっかりと発電しているかチェックしている人はなかなか多くはありません。
その際は、監視装置からメールなどでアラートが飛んでくる監視装置を選びましょう。月ごとの売電明細でも故障の可能性に気付くことがありますが、そこで気づいた時のショックは大変大きいです。
広く普及している本格的な遠隔監視装置に「ひだまりeyes」があります。岐阜県にある太陽光発電設備の販売施工業者が、利用者の利便性と使いやすさを重視して開発したものです。最大99台のパワーコンディショナーの監視を24時間態勢で行い、パソコンやスマートフォンで稼働状況を見やすく知らせてくれるうえ、異常を感知したときは、アラートで知らせてくれます。
アラート機能はおススメです。常時画面に張り付いていなくてもトラブルにすぐに気づけますから。ひだまりeyesには監視カメラもついていますので、いたずら防止効果なども期待できます。
上は、ひだまりeyesのデモ画面です。折れ線グラフで時間ごとの発電量や売電額が分かります。クリック一つで年単位、月単位、日単位のグラフと数字に切り替わります。
太陽光発電ムラ市場では、ひだまりeyesのを扱っております。詳細は以下のURLをクリックしてください。
https://ichiba.solar-club.jp/products/detail.php?product_id=129
3-3 自分でもできる点検
先ほどもお伝えしましたが、簡単にできて重要なのが目視確認です。ガラス面の変色や汚れだけでなく、架台の腐食やネジの緩みがないかなどについても点検できます。
これ以外に、機器を使用し自分でできる点検があります。
太陽光発電ムラ市場では、これらの点検装置をレンタルしております。
・絶縁抵抗測定器
電流が流れてはいけない部分の電気抵抗を測定する装置で、自分で点検する際には必須のアイテムです。絶縁が劣化すると感電や漏電の恐れがあるのでこちらの機器をしようし点検していきます。
詳細は以下をご確認ください。
https://ichiba.solar-club.jp/products/detail.php?product_id=441
・サーモカメラ
接触不良や発電不良によって生じるパネルの温度上昇を検知します。発電不良はホットスポットによっても起こります。
詳細は以下をご確認ください。
https://ichiba.solar-club.jp/products/detail.php?product_id=58
・パネルチェッカー
発電中のパネルに当てて、パネルの動作確認や故障パネルの特定に使います。パネルをはずさずに点検できる利点があります。
詳細は以下をご確認ください。
https://ichiba.solar-club.jp/products/detail.php?product_id=59
・アレイテスター
これもパネルの不具合を調べるものです。屋根に上がるなどパネルに近づかなくても接続箱から測定できます。
太陽モジュールのどの部分が故障しているか、10秒~20秒程度で分かります。
詳細は以下をご確認ください。
https://ichiba.solar-club.jp/products/detail.php?product_id=57
こちらのレンタル商品は推進会員は無料ですが、会員以外は10,000円~24,800円のレンタル料金がかかります。業者に定期点検を頼むか、自分でやるかも含めて、確実に点検・メンテナンスができる手段を考えるのいいでしょう。
推進会員のお申し込みと詳細な内容についてはこちらを確認ください。
https://solar-club.jp/member/avein/suishin_form/
4 まとめ
太陽光パネルの寿命についてご説明してきました。ポイントは
✓パネルは必ず劣化する
✓現実には、30年以上も大きな発電低下もなく稼働している発電所がある
✓パネルの選択は、発電効率と劣化率、価格の比較が重要
✓毎日のモニタリングや定期点検とメンテナンスでパネルの寿命は伸びる
初めにパネルの寿命は20~30年と言いましたが、むしろこれは抑えた数字です。メーカーが20年や25年の出力保証を付けるはずがありません。
技術の進歩は目覚ましく、さらに高効率なパネルが誕生することも十分期待できます。
これからも再生可能エネルギー、中でも太陽光発電への期待がしぼむことはないでしょう。
これからも、太陽光に関する知識をどんどんつけ、太陽光発電投資の1歩を踏み出していきましょう!
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