お、このサイト中古の発電所を販売してるぞ! そうか実際に中古の発電所も買えるし俺が持ってる発電所もいざとなったら売れるのか!
そうなんです。
全量買取制度が始まってから5年が経過し、世の中にはセカンダリ取引と言われる中古の発電所が出回り始めています。
一度もった資産を手放すというとネガティブなイメージを持つ人も多いと思います。
しかし、実際には
・太陽光から不動産へと資産内容を変更したいという人
・発電所の売買でまとまったお金を作りそれを元手に次のビジネスを展開したい人
・会社の業績が思わしくなくまとまった現金が如何しても必要な人
など転売の理由は様々です。
一方でセカンダリ取引には新設の発電所と違う特徴があります。
この特徴をうまく使えば新たな買い手がつきやすくなるというメリットがあります。
この記事ではコンサルタントとして実際にセカンダリ物件の値付けをしている私が、太陽光発電所のセカンダリー取引の基礎的な知識から値段のつけ方、お得な情報、損をしないための情報をご紹介します。
ご自分の発電所は今この瞬間いくらの価値があるのか。
これを知っておくだけで人生の選択肢が一つ多くなります。
さぁ一緒にご自分の発電所の値付けをしてみましょう。
1 出回り始めた稼働済み太陽光発電所の中古売買 セカンダリー取引の実態
これまで新築の発電所を増やすことがメインだった太陽光発電事業ですが、セカンダリ取引(中古発電所の売買)も出回り始めました。
太陽光発電所のセカンダリー取引は金融機関が評価しやすいようにきちんと情報を整理してあげれば融資のつきやすい優良物件になります。
新たな買い手には新規の物件よりも銀行融資を引き出す材料が多くなったり、工事期間がない分発電所がすぐに手に入ったり、キャッシュフローがすぐに黒になったり、といったメリットを受けることができるのです。
この章では情報を整理する基となる項目と値段の決まり方についてみていきます。
1-1 太陽光発電のセカンダリー取引の値段の決まり方
ではまずセカンダリ取引ーの値段の決まり方を見ていきます。
ここではある物件を実例にして見てみようと思います。
もともと分譲で販売されていた物件を1年稼働させ、セカンダリ市場に出したという事例です。
<新規物件時の情報>
兵庫県 某市 売電単価 27円
パネル容量 82.88kW
パワコン容量 49.5kW
年間発電量予測 88,961kW
物件価格 2400万円税込 (表面利回り10.80%)
この物件を実際に1年稼働させたところ94,429kWhの発電実績となりました。
予測よりも6%上回った形です。
この発電所を1年経過時でセカンダリー市場に出した場合、いくらの評価をされるでしょうか?
1-2 このセカンダリー物件はいくらで買い手がつくか?
新規の物件同様、シミュレーションをしてみることにします。
(参考)誰でも簡単に出来る太陽光発電投資の発電量&事業シミュレーション
リンク先には実際の事業シミュレーションの方法が記載されています。
この記事の中の「4–1 エクセルフォームで簡単に20年間の事業計画を作成」という部分を利用して残り19年の事業シミュレーションを立ててみました。
利息2%で9割の融資(一割自己資金)をつけてもらうことを想定してみます。
返済期間は15年、返済方法は元本均等返済という形で想定しています。
管理費、パワコン交換費用、事業終了時の撤去費も計画に盛り込んでいます。
>>セカンダリー物件の販売依頼、値付け依頼は太陽光発電ムラ市場まで
19年という数字は15年の融資を組んでも十分成り立つ期間です。
また法定耐用年数も1年経過ということで16年になり、減価償却費と元本返済のバランスが取りやすい状況になります。
売り主さんの資金状況や市場の動き具合にもよりますが、私であれば下記の値段を基準に金額設定します。
<査定結果>
売買金額 2500万円(税込)
昨年実績表面利回り11.01%
19年後の想定キャッシュフロー額 1142万円
19年後の想定自己資本CF率 457%
1割自己資金で計画を立て、初年度からキャッシュフローが回る形で事業計画を立てるとこの2500万円という金額がちょうどキャッシュフローが回る(初年度から黒字になる)金額です。
もちろん相場や売り手がつくまでの時間などで売買価格は変動しますが考え方としてはこのような考え方ができます。
この発電所は1年運用することにより、100万円価値を上げたということになります。
今の相場、今の状況で売れる金額を付けてきたいのであれば値付けのプロにご相談してみるのをお勧めします。
>>セカンダリー物件の販売依頼、値付け依頼は太陽光発電ムラ市場まで
2 セカンダリー取引のメリット
2-1 売り手側から見たセカンダリー取引のメリットとは 利益確定 メンテナンス 資産の整理
みなさんご自分の太陽光発電書を売りたいと思いますか?
通常太陽光発電所のオーナーは自分の発電所を売ろうとは考えません。
働かなくてもお日様さえ登ってくれれば仕事をしてくれるのが太陽光発電所。
その利益を20年間ゆっくり受け取れることがある程度決まっています。
しかし、仮にもっと早くお金が必要になってしまった場合どうすればいいでしょうか?
今急速に立ち上がっている市場に急遽まとまった資金を投下したいというような場合です。
例えばビットコイン投資のために売りたいという方もいました。
不確かなものを確定させるわけですから、想定される未来の利益よりも減額されてしまいます。
しかしそれよりも利益を確定させるメリットがうわまっていれば売却する意味があるということになります。
2-2 買い手側に伝えてあげたい セカンダリー取引のメリットとは 安全 利益が見える 融資をつけやすい
それでは買い手に伝えてあげるべきメリットは何があるでしょうか。
新設と比べると事業期間中に得られる金額的なメリットは少なくなる可能性があります。
しかし新設物件と比べると詐欺や工事業者の倒産などのリスクは圧倒的に少なくなります。
下の表は太陽光発電投資に対して金融機関が感じるリスクとセカンダリー物件の場合の優位点についてまとめたものです。
どうでしょうか?
もちろんリスクを完全にゼロにできるわけではありません。
しかし金融機関が感じるリスクの大部分を低減させることはできるといえます。
あとは買い手がそれを金融機関にアピールできるかどうかです。
この点をアピールしやすい資料を売り手が用意してあげるというのも一つの手かもしれません。
3 セカンダリー取引で得をする方法と損をしないための注意点
この章ではセカンダリー取引で得をする方法、損をしない方法をまとめてみました。
3-1 シミュレーションよりも売電実績のいい発電所は高い値段をつけやすい!
当然ながら売電実績は高ければ高いほど売りやすくなります。
<メーカーシミュレーションと実発電量との差>
多くの分譲発電所がシミュレーションを評価して分譲価格が決まります。
シミュレーションと実際の発電所には差異があります。
メーカーシミュレーションは多くの場合、そのエリアの代表的な場所の日射量を基にしていますから誤差は出てきます。
山や川を越えると気象条件が変わってしまうことは珍しくありませんし、パネルメーカーやパワコンメーカー、気温、風速、送電網の状況によってシミュレーション値とはズレが生じてしまいます。
それに対してセカンダリー物件は売電実績を評価されて市場価値が決まるわけです。当然その分安全性は高くなります。
仮にシミュレーション値よりも発電量が明らかに多かった発電所を売りに出した場合どうなるか?
当然高い価格で売買される形になります。とは言っても売電年数が経過してしまうとその分発電所の売買価格は下がってしまいます。
とはいえその期間の売電収入を売り主は得ているわけですからトータルで見ると得をしています。
ちょうど1年売電実績が出たタイミングで発電所の売電額が想定よりも多かった時、それが最高の売り時です。
3-2 実際に売却する場合 大きな売り上げ・所得が出てしまうので要注意!
では売却する際に気をつけることはどんなことがあるでしょうか?
注意事項をまとめてみました。
3-2-1 簿価と売却金額の差額が「利益」とみなされます
太陽光発電所の販売価格と会計上の簿価(初期の買い取り価格から減価償却費を引いていった金額)との差額は「利益」とみなされます。
会計年度で締めた際に利益が出ていると当然ながら課税対象になります。
特に定率法で減価償却していった場合、初期の5年程度で大きく減価償却されていきますので会計上の利益は大きくなってしまいます。
ご注意ください。
3-2-2 発電所の売買金額は「売り上げ」に 消費税課税事業者ならないようにご注意
個人事業主や小規模の法人の場合も要注意です。
通常太陽光発電所をセカンダリで売りにだすと1000万円以上の値段がつくことがほとんどだと思います。
もしその金額で売れた場合、全額がその年の売り上げになります。
当然ながら1000万円以上の売り上げがある場合消費税の課税事業者になってしまいますのでご注意ください。
3-2-3 現金で買える人や今の取引銀行を紹介できると有利に!
セカンダリ取引で一番問題になるのが「取引時期」です。
「別にお金はすぐに必要ではないけれども売れればいいかな」という方であればあまり心配する必要はありません。
発電していった分だけ、徐々に発電所の価格を下げていけばいいだけの話です。
しかし「2ヶ月以内にまとまったお金が必要」などという状況ですと、「いつ売れるか?」はとても重要な情報です。
そういった場合はどうすればいいでしょうか?
<売り手に親切な販売方法>
今の発電所の取引銀行(ローンを組んでいる銀行や売電収入が入金されている銀行)を紹介できる場合、次のオーナーが融資を組みやすくなることがあります。
特に地銀から融資を受けている場合、その地銀のエリアの投資家には融資がつきやすくなります。
実際にその金融機関は売電口座を確認できるわけですから当然ですよね。
「︎︎銀行紹介可能」という販売の仕方は有利に働く一つのポイントといえます。
もちろん現金で購入できる方をご存知の場合、その方が購入してくれたらとても話は簡単になります。
ですが現金で数千万円を持っている方には当然利回りのいい投資物件情報が集まってきます。
その方が本当に買ってくれるかはその方の状況次第ですのでご注意ください。
3-2-4 トラックレコード(運用実績)がないと評価されないので要注意!
セカンダリ取引の最大の魅力は実績があることです。
売電実績、管理記録、故障記録、修理記録などです。
このようなデータがあると金融機関が評価しやすい状態に持っていくことができます。
太陽光発電投資の特徴は20年間の固定価格買取のおかげで事業計画が立てやすいことです。
しかしそれでも銀行融資がつかないことがあるのはなぜか?
それはその発電所がまだ存在していないからと言う場合もあります。(完工リスク、用地確保リスク、業者リスク)
この点をしっかりと証明できるのがセカンダリ取引の強み。
しかしそれを証明するものがないのでは全く強みがいきてきません。
下記の資料を揃え、次のオーナーが正確な事業計画を立てられるようにしておきましょう。
高く売れるということも大事ですが、早く現金化できるということも大きなメリットです。
<まとめておくべき実績>
- 売買実績(検針票コピー含む)
- 点検記録
- 修理記録
- 設備認定書
- パネル パワコン保証書
- 土地登記簿
まとめ
・稼働済みの太陽光発電所は実際にセカンダリ取引の形で販売することができる
・本当に販売したい場合、値段のつけ方は「買い手が融資を受けて事業を運営できる金額」が基準になる
・セカンダリー物件の優位性を生かすためにはしっかりとした「実績資料」が必須