335万円差が出る!? 太陽光発電10kW全量と余剰の選び方

太陽光発電で10kW以上設備の場合、はじめに全量買取で申請するか、
余剰買取で申請するか迷ってしまいますよね。
これまでは、売電価格(調達価格)が電気使用料金よりもはるかに高かったため、
無条件に全量買取制度を選択する方がほとんどでした。

しかし、電気使用料金が毎年じわじわと値上がりし、買取価格が下がったことにより、
余剰買取制度を選ぶ方が増えてきています。

そこで今回は、全量、余剰それぞれを選んだ場合の想定売電金額予想節約電気料金を比べる方法をご紹介いたします。

平成29年度の売電価格で20年間のシミュレーションをしてみたところ、ある条件のお宅では、全量と比べて、335万円余剰制度を選択した方がお得という結果が出ました。

10kW以上で迷っている方は電気使用明細をご用意の上、ご自分の電気生活にあったプランで、シミュレーションしてみましょう。
まずは、簡単に全量と余剰の買取制度からご説明いたします。

1. 全量と余剰、買取制度を比較する

太陽光発電で発電した電気を全て送り、家庭でご自分が使う電気は電力会社から購入する制度を全量買取制度といい、
反対に、家庭で使った電気の余りを売電する制度を余剰買取制度と言います。

 

1− 1 発電した電気を全て売電するプラン(全量)

全量買取制度は、0kW以上の太陽光発電設備のみで選べる買取制度です。
太陽光から発電した電気を全て電線に流し売電します。

売電する価格(単価)が決まっているので、発電シミュレーションから売電価格をそのまま予測できます。
小売業者や工場など、21円以下(2017年現在)昼間の電気を21円以下(2017年現在)で購入できる電力契約を結んでいる場合は、この全量買取制度を選びましょう。

20年間の電力会社との契約が切れる20年目以降は、再契約または、自家消費も選べます。(工事が必要)
毎年調達価格(買取価格)が変動します。平成29年度の買取価格を狙っている方は、申請を急ぎましょう。
※いくら電気を使っても売電量に影響が出ない為、毎日の節電意識が低くなってしまうデメリットもあります。

http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
資源エネルギー庁のHP

1−2 発電した電気を家庭で使い、余った電気を売電するプラン(余剰)

余剰買取制度は、昼間の発電した電気を自家消費し、その後余った分を売電します。
10kW未満のシステムはこの余剰1択ですが、10kW以上のシステムでも選択することができるのをご存知でしたでしょうか。

この余剰買取制度を利用することで、節電意識が高まり、昼間の電気料金の高い時間帯は太陽光発電で補い、朝夕、夜間の安い時間帯に電気を買うまたは貯める生活にシフトします。

例えば、中部電力管内のオール電化契約(スマートライフプラン)では、昼間の電気使用料金はを38円です。(3時間帯別など)

この時間帯は夜間の約2倍の価格帯に設定されています。この時間帯の使用量を0に近づけることが、電気料金節約への近道です。
https://www.chuden.co.jp/home/home_menu/home_basic/smart/index.html?cid=ul_me
中部電力のスマートライフプラン

昼間、発電した電気の約70%を自宅で使い、30%を売電しているご家庭の場合、自家消費電力率は70%となります。
この70%が割高な38円/kWhを太陽光発電がまかなってくれるシステムです。
毎日、晴れの日には、高額な電気料金形態を心配する必要が無くなります。そして、節電とも無縁の生活が送れることで、高い料金形態から抜け出せる、電気料金の自動化設計が大きなポイントです。

売電期間は20年間。電力会社との契約が切れる20年目以降も同じように余剰買取制度の再契約をすることが予測されます。(価格は変更する)
平成29年度の買取価格(調達価格)は、21円/kW(税別)、10kW未満の設備は、28円/kW(税込)です。

1−3 余剰買取制度で電気使用料が335万円お得

毎月の電気使用料金が高額だと相談にみえたSさん、10kWの太陽光発電システムを全量、または余剰買取制度で導入した場合、どちらがお得になるのか、K社のシミュレーションシステムを使って試しに試算してみました。

お住まい 静岡県
家族構成 ご両親とお子さん(長男10歳、長女8歳、次女5歳)の7人家族
昼間の在宅者 ご両親2人
平日の子供の帰宅時間 15時〜16時
平均光熱費 約¥30,000円

 

こちらのご家族の電気使用料金は、2世帯住宅ということもあり、比較的高めです。主な原因は

  • 昼間の在宅者が高齢なこと
  • 冷蔵庫(冷凍庫も含む)が3台あること
  • 節電意識がない

それでは、Sさんご家族が10kW余剰を設置した場合、電気使用料金がどのくらい変わってくるのか、シミュレーション結果を見てみましょう。

年間予測発電電力量→ 1年間に太陽光発電システムから発電されるであろう電力量
年間予測節約電気料金→ 現在よりもこれだけ節約できるであろう節約予測金額

これまで、毎月支払っていた年間約¥360,000円の光熱費を大幅に削減できる生活に変わる予測が出てきました。
こちらのグラフは全量買取制度と余剰買取制度それぞれの20年間に使用する電気料金の予測です。
どちらも売電により大幅に削減される予測となっていますが、余剰を選んだ場合の方が、支払い金額差が大きいことが明らかです。

全量買取制度を選んだ場合 余剰買取制度を選んだ場合
20年間の売電予測 ¥5,019,420円 ¥1,505,826円
20年間の電気使用料金 ¥7,200,000円 ¥333,360円
20年間の差し引き △¥2,180,580円 ¥1,172,446円

全量買取制度を選んだ場合に支払う電気料金と余剰買取制度選んだ場合の差額はこちら↓

これまで通りの生活を続けていた場合、20年間でおよそ¥7,200,000円支払うはずでしたが、太陽光発電10kWの余剰買取制度を選ぶことで、¥333,360円にまで削減できる予測が出てきました。
また、昼間の電気使用量が大きいSさんは、自家消費率が70%程度で、残りの30%を売電します。20年間の売電と買電の差し引き差から約¥3,353,026円お得な結果となりました。

1−4 50kW余剰で年間節約電気料金は72万円

工場や店舗など、高圧契約や、使用量に伴って電気料金が決まる価格帯でも毎月20万円の電気使用料金を34%削減できるシミュレーション結果が出ました。
夏期と冬期で料金形態が変わる高圧契約は、基本料金をどれだけ下げられるかが節約のポイントとなります。常に節約を心がけていても、一時的に電気使用量が跳ね上がってしまった場合、その日から1年間はその瞬間値を基準とした基本料金になってしまいます。

そこで、特に電気使用量が多くなる昼間13時〜16時真夏の午後の、一時的に跳ね上がる使用量をコントロールすると、契約容量を抑えられ、基本料金をぐっと抑えることができます。

2. シミュレーターを使って予想してみましょう

余剰買取制度を選ぶかどうか、迷ってしまったときには試算してみましょう。電気料金表をご用意ください。シミュレーションで年間予測節約電気料金も見ることができます。

まずは、こちらをクリック
http://solarsystem.kyocera.co.jp/solar/app/simu/ep/step1.html
京セラ公共・産業用太陽光発電シミュレーション

2−1 シミュレーターの簡単な使い方

①お住いの地域をクリックします

②郵便番号を入力し、検索をクリックします

③電気料金表と照らし合わせて料金メニューを選んでください。
現在の電気料金1ヶ月で簡易計算するか、12ヶ月で詳細計算するか選びます。

④システムの設置方法、容量、角度、方位を選びます。
わからない場合は、10kWで30°、0°でまずは試してみましょう。

⑤受電方式は、家庭用ですと、低圧3相式が多いですが、単相の場合もあります。
損失率は、今回は0%を選びましたが、15%を選んでおくとより現実的なシミュレーションになります。

⑥STEP4で確認、入力に間違いがなければ次へ進みます

⑦結果を見ると、日射量、予測発電電力量など細かく見ることができます。
売電電力比率29。9%、予測発電電力量はkWhで表示してあります。
約7割を自家消費するプランです。

年間予測節約電気料金、10年間の節約電気料金を予測することができます。

3. 10kW設置できる面積とシステム費用

10kW以上の太陽光発電設備を設置する費用する費用は?また、これから価格は下がるのでしょうか。

3−1 相場価格はどのくらい

こちらは、ここ5年間の太陽光発電システムの設備費用の推移です。平成24年度から比べると約35%ダウンしています。設置価格の推移

家庭向け太陽光発電(10kW未満)は1〜2割高め(30万円〜)です。屋根上設置になるので、10kW以上でも家庭向け太陽光と同じ価格くらいになります。
詳しく試算してみたい方は、こちらの記事をチエックしてみてください。

太陽光発電の施工店が泣いた100万円値引きさせた一括見積もり活用術

将来の10年後の電気料金を考えるには、再生エネルギー促進賦課金を忘れてはいけません。これは、太陽光発電を設置、設置なしに関わらず、電力会社から電気を買ったり、売ったりする度に毎回決まった料金が加算されています。

通称再エネ賦課金は、平成26年と比べると、2012年から4年で約5倍になっています。そして10年後は何倍になることでしょう。
この金額を抑えるためにも、発電した電気をそのまま使うことが電気料金削減への近道と言われています。

4. 実際に全量と余剰を選択したご家庭の事例

平成28年度の買取価格で設置された2件のお宅へインタビューしました。
どちらも2世帯または3世帯の大家族ですが、昼間の電気使用量の違いがありました。
よろしければ参考になさってください。

4−1 新築に設置した事例 静岡県藤枝市在中F様【全量】

Q1: 全量買取制度の太陽光発電システムを設置したきっかけは?

新築を機に以前から気になっていた太陽光について友人に相談しました。これから売電価格が下がるので、今なら20年間売電価格が保証されている全量買取制度がいいと勧められたからです。
新築だったので、どのくらい電気料金がかかるかわからなかったので、収支がわかりやすい全量を選びました。

Q2:実際に発電量はいかがですか?

  
実は、あまり意識していないのですが、毎月¥35,000円〜¥45,000円ほど振り込まれています。
モニターで確認できるのも楽しいですね。

Q3: 屋根の上に設置したことで、何かよかったことや、不便なことはありませんか?

今回、新築工事と一緒に設置したので、設置費用が比較的抑えられたことと、補助金を利用することができました。
今の所、特に不便だと感じたことはありません。非常用に使えることも魅力の一つですね。

Q4:電気料金はいかがですか?

毎月の電気料金は¥30,000程度です。
人数が多いせいか、冬場は2倍近く跳ね上がることもあります。電力消費量が大きくこれからどうしようか考えものですが、発電してくれている安心感があり、電気料金もあまり気にしていませんでした。

大きな屋根に大きな設備を設置して、そのまま売電しているF様ですが、今回、全量買取制度を選ばれたのは、消費電力量がわからなかったことが理由の一つでした。
これから、ご家族が増えたり生活スタイルの変化がある場合には、電気生活も見直す必要がありますね。

4−2 既築に設置した事例 静岡県磐田市 I様【余剰】

Q1:余剰の太陽光発電設備を設置されたきっかけをおしえてください。

自宅を新築するタイミングで決めました。まわりも太陽光発電が増えてきていたので。
以前はガス+電気温水器でしたが、オール電化と一緒に太陽光発電にしました。
日中の在宅時間が長く、これから電気料金もどんどん値上がりすると聞きました。
7kWほどのシステムでしたので、余剰の一択でした。

Q2:光熱費はかわりましたか?

以前はガス料金と電気料金でしたし、2世帯ではなかったので単純に比べるのは難しいですが、電気料金はお得になっていますね。

Q3:気になる電気料金はおいくらくらいでしょうか?

請求額は毎月約¥12,000円~¥15,000円です。(2世帯で)思ったほどではないでしょう。
売電も約¥15,000円~¥27,000円ほどあります。

2世帯住宅でも、月額1万円台の電気料金で収まるのは、節電を意識されていることと、昼間の電気消費が太陽光発電で十分に賄われている結果ですね。これからさらに値上がりが予測されている電気使用料金ですが、このシステムがあれば安心です。余剰売電のメリットを活かした素晴らしい電気生活スタイルです。

5.まとめ

10kW以上の太陽光発電設備でも、余剰買取制度を選ぶご家庭が増えています。
設置前に、まずはシミュレーションで予測節約電気料金を試算してみましょう。
10年後、20年後の光熱費を予想することは、ご家族の電気生活を考え直すきっかけにもなります。
これからもっと値上がりすることが予測される電気料金、ただ支払うだけではもったいないですよね。
屋根上設置の太陽光発電をもっと有効活用して節電を気にすることなく電気を使える毎日を選びましょう。