メンテナンスをサボったおかげで40円が18円に?
太陽光発電のメンテナンスって義務化されているの?メンテナンスフリーじゃないの?
専門家に依頼するメンテナンスの費用なんて考えてないよ。
そう思っている方も多いのではないでしょうか?
確かに可動部分がほとんどな太陽光発電システムは故障がとても少ないという特徴があります。
しかしそれは「メンテナンスをしなくていい」ということではありません。
例えば今でも監視装置をつけていないという方は案外いるそうですが、仮にブレーカーが落ちた場合、発見できるのは電力会社から検針票が届いた時です。
ひどい時は2ヶ月近くパワコンが止まったままということもあり得ます。
この記事では太陽光発電所を20年間安全に運用する上で必要なメンテナンス、保守点検を詳しく解説していきます。
故障・不具合の早期発見は発電所の運営の基本です。
みなさんの発電所が本当に健全なのか確認しながら読んでみてください
目次
1 太陽光発電に必要なメンテナンス(点検)とは
お日様が照っていれば自動的に発電してくれる太陽光発電システム。
晴れた日に監視システムを見ているとドンドン売電されていくのでとても嬉しい気分になります。
そんな可愛い可愛い発電所に何かがあったら大変です。
ではどんなメンテナンスが必要なのかというとこれが少し難しいのです。
発電所に手厚いメンテナンスをしたからと言って売電量が上がるわけではありません。
必要最小限のメンテナンス・保守を必要なタイミングで実施するのが正解です。
1-1 メンテナンスガイドラインで定められている「やらなければいけない」メンテナンス
それでは「やらなければならないメンテナンス」を見ていきましょう。
実は太陽光発電では「やらないと認定が取り消される可能性がある」というメンテナンスがあるのです。
これは認定姿勢を上げる際に業者がチェックするチェック項目です。
この2番目に「安定的かつ効率的に再生可能エネルギー発電事業を行うために発電設備を適切に保守点検および維持管理すること」と書かれています。
これです。
このチェックを入れないと申請があげられないので100%確実にチェックすることになります。
ではこの「適切に保守点検および維持管理する」とはどういうことなのか。
実はJPEA(日本太陽光発電協会)が「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」という資料を出していますのでこれが一つの基準になります。
しかし、このガイドラインを読むと・・・かなりとんでもないレベルの内容が記載されています。
これをすべてやらなければいけないのかというと実はそうではないのです。
ここに記載されている内容は「保守点検計画案」です。
これをよく読んだ上で、自主判断でこのガイドラインに準拠した保守点検を行うことが義務付けられている内容になります。
しかし逆に言うとガイドラインの内容を全く知らない、全く実施していないということでは「準拠している」とは一切いうことができません。
少なくともガイドラインの内容を理解し、その上で何かしらのメンテナンスを実施するということが必要です。
1-2 発電所を運用する上でやったほうがいいメンテナンス
では現実問題としてやったほうがいいメンテナンス・保守点検はどんなものがあるでしょうか?
絶対にやったほうがいいもの順番に上げていきます。
1-2-1 日常監視 監視装置とアラートメール
何と言ってもこれが基本です。
遠隔監視装置による日常監視です。
でも毎日監視装置をチェックするのは面倒ですよね?
大丈夫です。
大抵の監視装置は異常があった時にアラートメールが出る設定ができます。
このメールを見逃さないようにしておきましょう。
パワコン単位、ストリング単位で監視できるタイプの物であればさらに詳しく見ることもできます。
月に1回くらいそんな見方をしてみてもいいかもしれませんね。
1-2-2 定期的な現場目視 パネル・パワコン・架台の目視、ぐらつきの確認
実はある程度知識のある人が現地で目視すると結構な情報が取れたりします。
目視検査も重要なんです。
架台の歪みがないか、ボルトとナットが緩んでいないかなどは目で見て、手で触って、架台を揺すってみたりして確認することができます。
パネルの異常発熱による焦付きなどもありえますからそれもバックシート(パネルの裏側)を目視することで発見できる場合もあります。
パネル表面のガラスの割れは結構粉々になってるんですが、相当注意してみないとわかりません。
粉々になっても発電してしまうので逆にわかりづらいという面も有ります。注意してみてみましょう。
1-2-3 雑草管理 日当たりのいい土地では必須!
地域や架台の高さにもよりますが年に1回〜4回程度の草刈りが必要になる場合があります。
<防草シート>
防草シートを敷いている場合でも年に1度は雑草対策をするつもりでいましょう。
防草シートの脇から雑草が生えてきますし、シートの上に土が溜まってしまうとそこから雑草が生えてきます。
<草刈り>
草刈り機で刈る場合には飛び石やケーブルの切断に十分注意をしてください。
飛び石がバックシートに直撃するとそこからパネルの結晶が壊れていきます。
またケーブルの切断は工事のやり直しになるばかりか、関電事故に繋がりかねません。
1-3 必要がなければやらないほうがいいメンテナンス
一方で太陽光発電では「必要なければやらない方がいいメンテナンス」もあります。
やるだけ時間とコストがかかってしまうばかりか、逆に発電所の能力を下げてしまう可能性もあります。
必要性と得られるメリットをしっかりと考えていきましょう。
1-3-1 パネルの洗浄
5度、10度など低い角度の場合はどうしてもパネルに水アカがついたり、パネルとフレームの間にゴミが溜まってしまうことがあります。
あまりひどいと発電量が1割近くおちてしまうこともあります。
こういった場合は高圧洗浄機などを使ってパネルを洗浄することもあります。
しかし、これは必要がなければやらない方がいいメンテナンスです。
高圧洗浄がガラスに細かい傷をつけてしまうこともあり、なん度も繰り返すとガラス自体が曇ってしまうこともありえます。
水道水を使うと水道水に含まれるカルキがパネルに残ってしまうこともありますからワイパー等で拭き取る必要があります。
発電量を落とさないためにお金をかけてやったメンテナンスが逆に発電量を下げてしまうのでは本末転倒ですよね。
もちろん適切な方法で洗浄すれば発電量はアップしますから近隣であれば雨の降った日にパネルを拭いてあげるというのはいい管理とも言えます。
1-3-2 パネルの雪下ろし
パネルに積もった雪。
晴れてきたらついつい雪下ろしをしたくなりますよね?
これはどうすればいいでしょうか?
10度架台の地域では実際は雪下ろしをしないとパネルから雪が消えません。
そもそも雪が降るという前提で設計されていないので雪の重みで架台が潰れるという事例も上がっています。
この場合は雪下ろしをせざるを得ません。
しかし雪国などで20度以上の設計になっている場合は雪下ろしはお勧めできません。
雪を下ろしているうちに自分が雪に埋まってしまったり、パネルを傷つけてしまったりと雪下ろし事故がありえるからです。
もちろん架台が雪の重みを計算していることが前提ですが晴れ間や雨などを待ち、自然現象での解決まで気長に待つのが得策です。
1-3-3 過度な草刈り
これもあまりお勧めできない管理です。
例えばパネルの一番低いところが80cmの発電所であれば、30cmくらいに伸びた雑草は無視できますよね。
あまり神経質に除草・草刈りをしすぎていると年になん度も実施しないといけないどころか、草刈りが現認の事故もありえます。(飛び石やケーブルの破断)
低くパネルを設置しているのであればある程度神経質になる気持ちもわかりますが、そうでないのであれば「今ある雑草が伸びてきても発電に影響がなければOK」というレベルの管理が長続きのコツです。
1-4 2年、3年たってきたときにやったほうがいいメンテナンス(点検)
実はここが肝心です。
ある製品が使用されている間に壊れる確率を表した曲線を「故障率曲線」といいます。
この故障率曲線はこのような形をしているのです。
この故障率曲線を見ると2年、3年経過時くらいのメンテナンス(点検)がとても大事だということがよくわかると思います。
出荷前の試験で見つけられなかった小さな不具合が1年の四季を経て現れてくるのが初期の経年劣化不具合です。
20年続く太陽光発電事業の肝とも言えるのがこの「経年時のメンテナンス」なのです。
1-4-1 架台の増し締め 最も基本的な検査 実は架台のボルトは緩みます
竣工時に丁寧にトルク管理をして閉めてもらったボルトとナット。
こんなものなかなか緩まないと思いますよね?
実は案外緩むんですよ。
特に夏に膨張し、冬に収縮し、大きな風を受け、、、こういった刺激を受け続けると緩んでくる場合があるんです。
(ボルトとナットにつけたマーカー線がずれている)
この写真のようにマーカーで線が引いてあればずれているかどうかがわかります。
しかしこの線が書かれていないとそもそも緩んでいるかどうかがわかりません。
きちんとした施工業者さんかどうかがこう言ったところで差が出てきます。
1-4-2 パネルの断線チェック
太陽光発電パネルはパネルの小さな「セル」という結晶が60個〜72個直列に繋がった形状をしています。
(60セルの太陽光パネル)
この直列につなげる線が断線してしまうと発電量が低下してしまいます。
しかしこれは外から見てもまったくわかりません。
そこでストリング(パネルを7枚〜10枚程度の単位で直列につないだ単位)ごとに検査する方法があります。
この機械を使えば、パネル1枚1枚を検査することなく、ストリング単位で効率的な断線チェックが可能です。
1-4-3 絶縁抵抗チェック
発電所のブレーカーが頻繁に落ちる、近隣の落雷の影響を受けたのか出力が低下した、増水があり発電所が一部水没した。
こんな状況になってしまったらどうすればいいでしょうか?
まず検査すべき「絶縁抵抗検査」です。
電路に対し電圧をかけていき、必要十分な絶縁抵抗があるか(電気が漏れないか)を検査します。
自転車のチューブに漏れがないか検査するようなイメージです。
この検査は「絶縁抵抗計」という機器で検査が可能です。
1-4-4 ホットスポットの確認
ホットスポットと言うのは太陽光発電パネルの一部から異常発熱を起こす現象のことです。
パネルのどこかに抵抗ができてしまうとその電気は熱に変わってしまいます。
当然発電量も落ちますが、発熱の状況によってはバックシートが焦げてしまうようなことも出てきます。
またパネルの一部に影がさすとその影の部分は発電をしないばかりか抵抗になってしまい発熱の原因になります。
こういったホットスポットは赤外線カメラで確認することができます。
ただ、難しいのはホットスポットができているからといって即パネルの出力低下や故障に直結しないところです。
今後故障する可能性が高いパネルを予見できるというレベルの場合がほとんどです。
1-4-5 目視によるパネルのガラス割れ確認
実はこの割れているパネルは注意してみないとなかなか発見できません。
原因は飛び石や雹、カラスのいたずらなど意外とたくさんあります。
パネルがひび割れていると水が入り込んで感電の原因になりますし、そこから漏電していると火災の原因になることもあります。
これは見つけたら即取り外しておくことをオススメします。
2 メンテナンス(点検)コストの妥当性を検証する
次にメンテナンス(点検)のコストとその妥当性を見ていきましょう。
太陽光発電所を管理するのにいったいどのくらいのコストを見ておけばいいのか基準を考えていきましょう。
2-1 太陽光発電のメンテナンスコストと時間
自分で作業を行えば確かに見た目のお金は減りません。
しかし何よりも大事な資産である「自分の時間」が減ってしまいます。
1基2基であれば自分でもできるでしょうが、複数基を保有していくと「年に2、3回のメンテナンス」がどんどん増えていきます。
メンテナンスを委託するコストと自分で実施する手間を表にまとめてみました。
草刈機のレンタルは地元の農機具メーカーの販売店に電話をするとかしてくれます。
また、専門の検査機器は太陽光発電ムラ市場の価格を記載しました。
年次点検と草刈りにかかる時間は1基あたり約4日。
本人の休日数にもよりますが、3基程度までであればなんとかなりそうな感じですよね。
2-2 太陽光発電のメンテナンスの注意点 素人の目視でどこまでわかるか
また、目視点検のようなメンテナンスでは「ポイント」を押さえておかないと折角見に行っても異常に気づくことができない事があります。
2-2-1 素人の目視で案外わからないこと
<パネルのひび割れ>
実は遠目に見ると案外気づきません。
しかし低圧1基で300枚近くあるパネル。
これを根気よく見ていくのも結構大変です。
<架台のナットの緩み>
架台のナットの緩みも案外気がつきません。
油性マジック等でマーキングされていればまだわかりやすいですが、それすらない場合はさらに困難です。
<雑草管理>
バックシートにへばりつくような雑草
→ バックシートが太陽光パネルの弱点。ここはしっかり守ってあげないといけません。
電力会社の連系柱の上のトランスまで伸びる葛
→ 連系柱の上のトランスに葛の蔓が侵入してしまうとトランスがショートして故障してしまいます。
→ ここも実際は発電事業者側が管理する必要がありますので根元で葛をしっかり切っておきましょう。
<パネルパワコンの異常が発見された時のトラブルシュート>
ここもわからないところ。
仮にレンタル機器を使って異常を発見したとしてその後どうすればいいか。
基本的には異常の原因を突き詰めていく作業に入ります。
ブレーカーの上げ下げ、パワコンの再起動程度でしたら一般の方でもできると思います。
しかしそこから先は業者さんの出番になりますので施工会社さんやメーカーに連絡を取りましょう。
3 まとめ
発電所のメンテナンス(管理)は適切に行わないと認定の取り消しがあり得ます。
業者さんに依頼すると当然有料になります。
しかし自分で全部やろうとすると時間と知識が膨大に必要になります。
自分でやる管理、業者さんに依頼する管理はしっかりと分けましょう。
コメント
「認定取り消しを防げ 太陽光発電のメンテナンス(管理)を理解せよ」に対する1件のコメント