太陽光発電投資で利益を出すためには変換効率が高い太陽光パネルは不要です。
むしろ最新の変換効率が高いパネルを使うと、大抵は投資効率が落ちてしまいます。
重要なのはパネルだけではなく、パワーコンディショナー(パワコン)、架台を含めたその土地にあったシステム全体内容と価格となります。
太陽光発電所の投資効率を上げるためのノウハウを学び、より収益率の高い投資をしていきましょう。
1 太陽光発電の投資効率を上げる部材
太陽光発電の投資効率でパネルの変更だけで差を出すのは難しいですが、総合的に考えて2割、3割効率の良い投資をすることは十分に可能です。
1−1 投資効率のいい太陽光パネルは
太陽光発電の主役となるパネルですが、投資においては変換効率を気にする必要はありません。
変換効率が高いパネルとは狭い面積でも発電できるパネルの事です。同じ250Wのパネルであれば変換効率が1割良くなってもサイズが一割小さくなるのみです。
実際にはパネルサイズが変わらず出力が大きくなるのですが、出力が大きくなると太陽光パネルは単価が上がるため、そのようなパネルを使うと投資効率が下がってしまいます。
太陽光発電投資において気にする必要があるのは、パネルの容量、設置枚数、ワット単価です。
1−1−1 太陽光パネルの種類と変換効率は売電収入に関係なし
太陽光発電投資で使用される太陽光パネルは、シリコン単結晶・シリコン多結晶系、シリコン薄膜系、化合物系の3つのカテゴリに分類されています。
それぞれ13.5%、8%、7%の変換効率があるものを用いなければ、経済産業省に発電所としての認定(設備認定)をしてもらうことが出来ません。
変換効率が関係するのはこの部分だけ。現在、太陽光発電投資に使用されているパネルはこの基準を大幅に上回っています。
1−1−2 単年の売電収入の決め手になるのはパネルの単価・出力・設置枚数
太陽光パネルは1枚あたりの最大出力のW(ワット)が必ず表示されています。この出力に設置枚数をかければ発電所のパネル容量となります。
例えば最大出力が260Wのパネルが200枚の発電所であれば
260(W) × 200(枚) = 52,000(W) = 52(kW)
この発電所のパネル容量は52kW(キロワット)となります。ちなみに1kWは1,000Wです。キロメートルとメートルの関係と同じですね。
仮にこのパネルが1枚19,500円だとしたらワット単価は
19,500(円) ÷ 260(W) =75(円/W)
となり、ワット単価は75円となります。
パネルの変換効率が上がるとパネルのワット数が増えますが、同時にワット単価も増えてしまいがちです。
特に各メーカーとも変換効率が一番高いパネルはワット単価も非常に高くなりがちなのでご注意下さい。
変換効率が高いパネルは狭い面積でたくさん発電できるため、主に屋根や狭小地など、十分な広さが確保できない条件で十分な発電量を確保したい時に使われます。
1−1−3 売電収入を2倍にする過積載
太陽光発電所の設備容量はパネルまたはパワコンの容量が小さい方を基準に定められます。
投資効率を上げるためにはパワコン容量に対し、パネル容量を多く設置する”過積載”の設計をするのが有利となります。
過積載をするとグラフのように、天気のいい季節の昼の発電ピーク時の電力は一部捨てられる一方、朝や夕方など発電量が少ない時間帯や日射量の少ない季節における発電量が増える事になります。
現在ではパワコンの容量に対して2倍のパネルの容量で設計した”過積載率200%”の発電所も出始めました。
過積載率を100%から200%にした時の発電量は194%。売電ロスは6%程度と想定されています。
1−1−4 20年後も以降も含めた収益予想とパネル選び
固定価格買取制度の売電期間は20年で終了しますが、20年後も太陽光発電所は燃料費ゼロで発電を続けますし、その安い電力を電力会社が買い取ることは確実です。
その際の電力の買取価格は10円/KWh以下とも言われていますが、自己所有の土地であれば十分続ける価値はあるでしょう。
太陽光パネルは通常でも25年の保証がついていますが、20年後以降も売電を続ける事を考えるなら30年の長期保証のパネルがお薦めです。
特に両面ガラスのタイプの太陽光パネルは劣化率も低く、最近ではだいぶ価格も落ち着いてきました。
その判断を20年後にしたいのであれば、リーズナブルな価格のパネルを採用して20年後に価格がさらに下がって性能が上がったパネルを交換する手もありますが、いずれにしろ施工費用はもう一度かかってしまいます。
また、25年保証があるのと25年間故障しないのとは別問題です。太陽光パネルは知識がなければ故障を見つけるのは難しく、25年後にそのメーカーがあるとも限りません。
メーカー選びは先行して投資を行っている方々から情報を集めるなどして慎重に行って下さい。
1−2 変換効率が重要なのはパワコン
太陽光発電投資の収益に直接関わるのはパワコンの変換効率です。メーカーや容量によって差異はありますが最大変換効率は大よそ95〜98%となっています。
1−2−1 発電量を増大させてくれるストリング毎のMPPT
パワコンがなるべく効率よく働くためにある機能がMPPT(最大電力追従)機能です。パワコンには複数のストリング(入力回路)がありますが、このMPPT機能がストリング毎に設定されているパワコンを使うと発電ロスを最小限に抑えることが出来ます。
ストリング毎にパネルの向きや角度が違っていたり、木や電柱があって影がかかりやすいパネルがある時には特に有効です。
(参考 田淵電機HP フルMPPT™方式とは?)
http://www.enetelus.jp/about/advantage01.html
1−2−2 パネル毎のMPPT制御でさらに発電量増大
MPPTをパネルごとに行えばさらに発電量が増大させることが出来、さらにパネルの故障をいち早く察知することが出来ます。パワーオプティマイザーと言われるこの機器は価格の面から導入が見送られてきましたが、最近は利用しやすい価格になってきました。
(参考:solar edge HP パワーオプティマイザー)
https://www.solaredge.com/ja/products/power-optimizer#/
1−2−3 パワコンは長期保証のものか予備の購入を
パワコンの製品保証は通常1年ですが、有償で10年や15年の保証にすることも出来ます。ただし故障率と価格の関係から考えると予備のパワコンを予め1台準備しておいたほうが価格的にも安く、何より故障時の納期の遅れによる売電収入のロスを抑えられます。
1−3 売電収入を一番左右するのは架台です
太陽光発電の投資効率はパネルの配置方法で2割も3割も変わります。投資効率を上げるためにはパネルの特性を知ることが重要です。
1−3−1 太陽光パネルの角度と発電量
太陽光パネルは通常、真南に向けて5〜40度ほどの角度(傾斜角)をつけて設置をします。
傾斜角が変わるとパネルに当たる光の量(日射量)が変わるため売電収入に影響が出ます。例えば東京でパネルの傾斜角を10度から30度にすると日射量が5%変わるので売電収入も5%増えます。
また、土地の形状によってはパネルを真南に向けるより東西に少しずらした方が、パネルを多く設置することが出来るケースがあります。仮にパネルを南東や南西に設置した時の年間の売電収入のロスは5%ほど、真東や真西の場合は15%ほどとなります。これは傾斜角によっても異なります。
最適な傾斜角は場所によって違いますし、傾斜角と方位角の組み合わせによってロス率も大きく変わります。詳しくはこちらのサイトで数字を確認してみて下さい。
(参考 NEDO日射量データ閲覧システム)
http://app0.infoc.nedo.go.jp/metpv/monsola.html
1−3−2 植物のように太陽を追いかける架台
傾斜角、方位角によるロスをゼロにするために自動で日中の太陽の軌道を追いかけ続けるタイプの架台もあり、追尾式架台やトラッキングシステムと呼ばれています。
この追尾式架台には南北方向にだけ角度が変えられる1軸式架台と東西南北に角度が変えられる2軸式架台があります。
一般的な架台より高価となりますが、その分売電収入も1軸式の場合で1〜2割ほど、2軸式の場合で3〜4割ほどアップします。
2 太陽光発電の投資効率を上げる設計
太陽光発電の設計はパネルから考えがちですが、まずは土地の特性に合わせた形で架台のレイアウトを行います。パネルやパワコンの選定についてはその後です。
2−1 パネルのレイアウト図の3つのチェックポイント
太陽光パネルのレイアウト図の作成を自力で行うためにはかなりの知識が必要ですので、ここでは業者任せて作ったものをご自身で判断する3つのチェックポイントをご紹介します。
2−1−1 パネルを設置する方位はパネル枚数優先で
パネルを設置する架台の向きは真南を向いた長方形の土地があれば楽なのですが、大抵はいびつな形をしています。
例えば北に南東方向に10度だけ傾いた長方形の250坪の土地があったとすると、普通にパネルをおけば260枚おけるところを220枚しか置けなくなります。
パネルが2割ほど減りますから売電収入は2割減ります。角度の違いによる売電収入の差は数%なのでパネルを南東に向けたほうが投資効率は良くなります。
2−1−2 パネルを設置する角度は10度または最適傾斜角で
太陽光パネル1枚あたりの発電量が最大化する傾斜角は日本の場合、30度前後ですが、傾斜角が大きくなるとパネルの列の間を大きく開ける必要が出てくるため、最近は積雪地域でなければ10度で設置する事が多くなっています。
パネルの角度を小さくすると汚れは多少落ちにくくなりますが、強風に強くなるというメリットもあります。
投資効率のことだけを考えるなら最後尾の列以外のパネルは10度で設置してパネル枚数を稼ぎ、影の影響のない最後尾の列だけは売電収入を一番稼げる角度にするのが一番です。
2−1−3 パネルの列と列の間の間隔の目安は傾斜角10度で1.4m
太陽光パネルは大抵、横置き4段で設置されます。パネル幅は1mなので4段の長さは約4m。これを10度で設置するとパネルの一番低いところから高いところまでの差が約70センチとなります。
前列のパネルの一番後ろから次の列のパネルまでの間隔はこの高さの差の2倍が一つの目安となります。理由もないのにパネル枚数を稼ぐために業者が極端に狭くしていたり、逆に何も考えず必要以上に広く設定されているケースもよく見られますのでしっかりとチェックしましょう。
2−2 影対策で電柱はなるべく北側に
太陽光発電所を新設する際には必ず発電所構内に電柱(又はポール)を建てます。この電柱の位地は電力会社との協議により自分で場所を選ぶことが出来ます。
電柱によって出来る影も売電収入を低下させる要因になりますので、出来るだけ影の影響の出ない北側に電柱を立てましょう。
また、近隣に不要な建物や木など影になるものがある時も、撤去や伐採できないか依頼してみましょう。
立地的にどうしても影の影響を受けてしまう際は、パワーオプティマイザーを利用すると影の影響を最小限にする事が出来ます。
2−3 パワコンは必ず日陰に設置
パワコンはパソコンと同じように稼働中は温度が上がるため常に放熱されています。パワコンに直射日光があたり、放熱が上手くいかなくなるとパワコンは運転を停止しまうため売電収入をロスしてしまうことに。
パワコンは必ずパネルの下の架台にかけて設置するか、屋根付きのパワコン用の架台を別途必ず用意して下さい。
2–4 ケーブルの電圧損失は2%以内に
太陽光発電で作られた電気は、ケーブルを通っている間に徐々に減ってしまうため、出来るだけ太陽光パネルからパワコン、そして電柱までの距離は短くなっていることが理想的です。
また、そのケーブルも十分の太さがないと、売電収入をロスすることにつながってしまいます。このロスの原因である電圧損失は、見積書の中のケーブルの太さとレイアウトを見比べて、各電力会社さんが用意している電圧上昇値簡易計算書に入力をすれば計算する事ができます。
電圧ロスは最大でも2%以内、出来れば1%以内に抑えるのが理想です。
(参考 関西電力HP 必要添付資料一覧 xlsx)
http://www.kepco.co.jp/corporate/takusou/excel/document_list.xlsx
3 エクセルシートを使って投資効率の高い発電所を設計してみましょう
では、実際に太陽光発電の投資効率の計算してみましょう。まずはこちらのエクセルシートをダウンロードしてください。以下、項目の埋め方を解説していきます。
太陽光発電投資案件簡易比較シート
Simplified-Comparative-Sheet-for-Photovoltaic-Power-Investment-Project
3−1 売電単価
平成29年度以降であれば、売電単価は経済産業省の設備認定が出た時の単価となります。平成28年度以前の価格についてはルールが複雑なのでこちらのページをご参照下さい。
なっとく再生可能エネルギー 買取価格・期間等
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html
3−2 20年分の地代
地代は購入なら購入価格、賃貸なら20年分の賃料を記載して下さい。ちなみに地主さんから購入でも賃貸でもいいと言われた時の売買の相場は賃料の10年分ほどとなっています。
地代の基準を調べたい時は、経済産業省の調達価格算定委員会における議事録(委員長案0で確認すると目安となる価格が記載されています。
3−3 土地造成費
土地の造成費はその土地によって大きく変わります。長年資材置き場にされていたような土地ではほぼかからない一方、傾斜地や竹林などでは土地購入費よりも割高になることもあります。
仮見積でもいいので現状引き渡しと造成渡しの価格情報を抑えておきましょう。
3−4 電力会社に支払う工事負担金
通常であれば工事負担金は施工費用の総額の2〜3%以下となります。しかし、発電所設置予定地から電線や需要地から遠いケースや、近隣で極端に多い数の太陽光発電所が設置されてるケースでは、施工費用の100倍以上になる事もあります。
土地の売買および賃貸契約は工事負担金がはっきりした後にするか、停止条件(取引を白紙に戻す条件)付きの契約を結んでおきましょう。
3−5 太陽光パネルのW単価
太陽光パネルの価格はワット単価(1Wあたりのパネル価格)で比較します。土地の広さに余裕があるならW単価の安いパネルを選びましょう。
土地が狭い際はワット単価が高くても出力が高いパネルを使うほうがいいケースもありますので、ワット単価が安いものと出力が高いパネルと両方の見積もりを取って価格を比較します。
3−6 パネル劣化率
パネルの劣化率については各メーカーが公表している保証に準拠したものを埋めて下さい。
3−7 パネル枚数
一定の土地に設置することが出来るパネルの枚数はパネルの大きさ、設置角度、パネルの列の間隔によって異なります。サイズの違うパネルの見積もりを依頼して投資効率を比較する際は、必ずそれぞれのレイアウトも入手してパネル枚数の違いも把握して下さい。
3−8 日射量と売電シミュレーション
その土地における日射量と売電シミュレーションをして、売電収入予測を立ててみましょう。パネルの見積もりと同時に業者がシミュレーションを添付してくれますが、各社ともにシミュレーションの基準が違います。
基準を一致させるために複数の業者、メーカーから見積もりを取って投資効率を検討する際は必ずご自身でシミュレーションをしてみて下さい。
参考 売電収入シミュレーションを自分でしてみる
https://taiyou-hatsuden.jp/solar-investment-distribution-total-explanation-126#i-22
4 まとめ
- 変換効率が高いパネルよりワット単価が安いパネルを選ぶ
- 投資効率を上げる一番の要因は過積載とレイアウト
- 土地ごとに違う日射量、電力会社への工事負担金、造成費用も考慮した計画を
太陽光発電設備の費用対効果をしっかり把握して、効率の良い投資をしていきましょう。