パネル・パワコンはデータシートで性能がわかるけど架台だけはよくわからないんだよなぁ。。。
この架台は結局高いのだろうか?安いのだろうか?
太陽光発電投資をする上で架台はとても重要です。
十分な強度が必要なのは当然の事として(耐風強度、積雪荷重)JIS規格対応や、粗度区分対応など架台に求められる事は年々増えてきています。
そういった中でコストダウンを計っていく事はかなり難しい事です。
また、架台の難しさはパネル・パワコンと異なりメーカーの公表しているスペックでの評価が難しいという特徴があります。
素材の強さや部材の厚みなどは見積もりや設計を見てもわかりづらいですよね。
2018年は異常気象が続き、発電所の事故も多くある年でした。
異常気象による事故は完全になくす事はできませんが少しでも強い発電所にする事はできます。
また、今保有している発電所を強化する事もできます。
この記事を読むとどのような架台が強いのか、今の発電所を強くするにはどうすればいいのかがわかります。
20年以上続く発電事業ですから、架台は相当重要です。
太陽光発電投資で致命的な失敗をしないために架台の基礎知識をしっかり身につけましょう。
1 太陽光発電の架台の種類
それではまずは太陽光発電の架台にはどんなものがあるか見ていきましょう。
基本的な特徴がわかれば、自分に必要な架台はどんなものか、そしてどんなところに気をつければいいのかがわかります。
1-1 野立て用のアルミ架台
投資用の太陽光発電所の架台で最も標準的なのかがこのアルミ架台です。
アルミは軽く、サビに強いという特徴があります。
また素材としての再利用性が高く、20年後の発電所の撤去の際もおそらく有価で引き取ってもらう事ができます。
事実上架台メーカーはほとんどが中国企業です。
輸入会社はドルで決済しますから円安になれば値上がりしますし、円高になれば値下がりします。
融資をつけた時点から値段が上下する可能性があるので資金計画には余裕を持っておきましょう。
1-1-1 基礎の種類 スクリュー杭
アルミ架台は通常スクリュー杭を地面に打ち込みます。
地盤の引き抜き強度が足りない時はスクリュー杭にコンクリを流し込んだ「根巻き」という施工を行います。
1-1-2 基礎の種類 コンクリ基礎
地盤が硬すぎたり、少し掘ったら岩が埋まっているような場合はコンクリ基礎を採用する場合もあります。
コンクリ基礎はパネルの裏側に吹き付ける風で架台が浮き上がらないようにするための「重り」です。
架台の設計に合わせて重りとなるコンクリブロックが何キロ必要なのかを計算し、コンクリブロックを配置していきます。
コンクリブロックは通常発電所の施工時に現地で作ります。
コンクリブロックの中にアンカーボルトという架台と繋がるボルトを埋め込みながら施工していきます。
部材を施主が自ら仕入れて工事を別に仕入れる分離発注をする場合に気をつけなければいけないのは、通常架台の仕入れにコンクリブロックは含まれないという部分です。
1-2 単管パイプで作る架台
単管パイプという工事用の資材を使った架台を自作する方もいます。
単管パイプの魅力は何と言ってもコストです。
中間部材となる部材はホームセンターでいくらでも売っています。
自作する事も可能ですからコストを抑えやすいのです。
基礎をつかわずに単管パイプを地面にさしているだけの発電所もあるようですが、この場合は引き抜き強度がよくわからないという問題があります。
もう一つ大きな問題点は構造計算書が出せないというところです。
太陽光発電所の架台はJIS規格に適合するが求められています。
職人さんが上手に作った単菅架台はかなり強度があるのですが、それを証明することが難しいのです。
後述するように太陽光発電の架台にはJIS基準の遵守が求められています。
経済産業省の締め付けが強くなってきた時に単菅架台の構造計算をしなければならなくなるという可能性もでてきます。
そういった事情もあり、強度にばらつきが出やすい単菅架台は個人的にはあまりオススメしません。
1-3 屋根設置 瓦屋根、スレート屋根、金属折半屋根、通常のビルの陸屋根
屋根に設置する場合にも架台は必要です。
家庭用の架台は通常瓦屋根用とスレート屋根(平らな板材のような屋根)の2種類があります。
屋根にはそれぞれ屋根材のメーカーがありますから、その屋根材のメーカーや型番を業者に伝えると架台の部材を見積もる事ができます。
投資用の野立て架台と異なり、基礎を設置する必要がありませんから比較的安価になります。
むしろ注意したいのは既存の屋根の防水をしっかりと守っていく事です。
太陽光発電パネルを屋根に設置したら雨漏りが始まったという笑えない事例は、案外よく聞く話なのです。
一方で真っ平らな陸屋根への設置はコンクリ基礎を置いた「置き基礎」というパターンと既存の屋根にアンカーボルトを打ち込んだ基礎の2種類があります。
アンカーボルトは陸屋根の防水層を破ってしまうという問題点がありますし、コンクリ基礎には建物の躯体に膨大な重さがかかるという問題点がそれぞれあります。
1-4 農地で発電 シェアリング架台
農地で営農しながら発電する場合はこの架台です。
パネルの下では農業を続け、上では発電事業を行います。
実は農作物の中にはそこまで多くの日射を必要としていない植物もあります。
このような作物と組み合わせることで農業と太陽光発電事業を同時に行うことができるのです。
農機具が入れるような2.3〜2.5m程度の高さの架台を設計するケースが一般的です。
架台の金額はそれなりに上がってしまいますが、農地を農地のまま発電事業ができるというのがメリットです。
新たな土地を取得する費用とシェアリング架台のコストアップを比較すると、実は案外経済性は問題にならなかったりします。
1-5 1〜2mの高さがある雪国用の架台
架台の高さをあげればあげただけ、架台のコストはアップしてしまいます。
また角度を立てても当然同じようにコストが上がっていきます。
雪国では通常1〜2m程度の高さの架台を設計します。
角度も20度〜30度程度の発電所が殆どです。
10度の架台ではまず間違いなく雪が落ちません。
30cmも降ったら重みでつぶれてしまいます。
雪国の架台ではこの辺のコストアップが発生します。
しかし、逆に考えると1m程度の雑草は影響を受けないことになりますから「雑草に強い発電所」とえます。
1-6 スチール架台 重いが強度抜群
今までアルミ架台を中心に説明してきましたが、高圧の発電所などではさらに強度を出すためにスチールの架台もつかっています。
強度は抜群ですがどうしても重たくなってしまうので施工性も落ちてしまいます。
また部材コストもやや高めです。
2 太陽光発電の架台のトラブルと基準
次に太陽光発電の架台のトラブルを見てみましょう。
トラブルが起こりやすいところ = トラブルを回避するための大事なポイント ですからここはとても重要です。
2-1 新規格(JIS規格、設計ガイドライン)に対応しておらず認定取消になってしまう可能性がある
2016年に太陽光システム保守点検ガイドラインが策定されています。
その中には架台の設計図面や地盤調査の情報、構造計算に関する書類があることが望ましいと記載されています。
また、2017年6月にはNEDOと太陽光発電協会が「太陽光発電の設計ガイドライン」を策定しており、そこにはJIS C 8955:2017の規格に適応していることも条件づけられています。
当然単管パイプでDIYで作った架台ではこれらの基準には適合しません。
現段階では「基準に適合していない=即認定取り消し」とは定められていません。
しかし2018年には政府が「再エネは基幹電源の一部である」という姿勢を取っていますから、これまで以上に架台強度の基準は高められていくでしょう。
未来の基準はわかりませんから議論することはできませんが、まずは今の基準を満たした架台を剪定しておくことが肝心です。
架台の見積もりを取る際には「設計ガイドラインやJIS規格を満たしていますか?」と一言聞いておきましょう。
2-2 引き抜き強度が足りず、架台基礎が抜けてしまう
太陽光発電の架台で最も基本的なポイントが「地盤の引き抜き強度」です。
これは架台の問題というよりは地盤の問題です。
軟弱な地盤や砂地だった場合を想像してください。
南向きに10度〜20度の傾斜が付いている太陽光発電パネルの背面から突風が吹いた場合、発電所を持ち上げる方向に力が発生します。
この時、砂地に単管パイプを刺しただけの発電所では浮き上がってしまいます。
それを防ぐためにスクリュー杭を使ったり、コンクリで補強を行ったりして引き抜き強度を確保することが一般的です。
この引き抜き強度は「スウェーデン式サウンディング調査」という調査方法で調べることができます。
しかし、実際に自分で土地を仕入れて発電所を作っていくような場合、土地の取引前の段階でその調査をするかというと・・・
低圧1基分の土地の取引ではまずやりません。
このような時はどうすればいいか?
不動産屋さんや不動産鑑定士さんに「この辺の地盤はどうなの?」と聞くのが一番費用対効果の高い答えだったりします。
2-3 架台の強度や地面の硬さが足りずに雪や強風で杭が陥没 架台が潰れてしまう
次に困るのがこのパターン。
雪やパネル正面からの暴風で架台や杭が陥没してしまうパターンです。
(写真 太陽光発電システム設計ガイドラインより)
架台が曲がってしまうような場合は架台の保証や保険で対応可能です。
しかし、杭がめり込んでしまった場合は実は有効な手段がありません。
杭の上に高さを稼ぐパーツを後入れして水平を取り戻す方法もありますが、次の暴風でまためり込んでしまう可能性もあります。
特に怖いのが畑でソーラーシェアリングを行う場合です。
よく耕され、柔らかい地面になっているわけですから雪や暴風でめり込んでしまうことは十分考えられます。
地盤が柔らかい場合は引き抜き強度を測ったり、基礎をコンクリ基礎にしたりという工夫が必要になってきます。
2-4 思いがけない強風でパネルが吹き飛んでしまう
これが一番多いトラブルではないでしょうか?
今年の強烈な台風でもパネルが吹き飛んでしまったという例はいくつも報告されています。
屋根や看板が吹き飛んでしまうような状態では太陽光パネルも当然吹き飛びます。
特に吹き飛びやすいのは発電所の北側です。
背後から吹いてくる暴風でパネルが飛ぶ形です。
その架台よりも南側の架台は最北の架台が風よけとなり、飛ばないパターンがほとんどです。
逆に言うと北側に風よけになるような物がない発電所はパネルが飛びやすいと言えます。
発電所の北側に塀や植栽をするだけでパネルが飛ぶリスクを減らすことができます。
2-5 一部の部材に錆が発生 経年とともに手がつけられなくなる
アルミで出来ている架台ですから基本的にはサビとは無縁なんですが、ボルトやナットはアルミではできていないのでサビが発生する可能性があります。
ボルトの中まで錆びて壊れてしまようなことはなかなかありませんが、それでも錆びない物を選びたいですよね。
3 弱い架台を作ってしまった場合の強化方法
残念ながら自分で保有されている発電所の架台に問題があった場合、どう対処すればいいでしょうか?
この章ではその点を見ていきます。
3-1 後から引き抜き強度を強化する方法
発電所の引き抜き強度に問題があるということがわかった場合どのようにすればいいでしょうか?
本来であれば、最初に引き抜き強度を確保すべきであることは当然ですが、どうしても後から強化する必要がある場合はこのような形で後から引き抜き強度を強化する方法もあります。
この方法はパネルを取り外さなくてもできる施工方法ですので現状では一番安価な方法と言えます。
>> 架台の引き抜き強度の強化方法 お問い合わせください!
3-2 架台の強度を後から強化する方法
架台を後から強化する方法は「筋交いを入れていく」ことに尽きます。
一般的な太陽光発電所の架台は筋交いが1本入った構造をしています。
(写真 太陽光システム設計ガイドラインより)
しかし積雪荷重がかかる雪国では筋交いをもう一本多く入れ、W型の架台として強度を確保しています。
写真は筆者である私が1区画所有している岩手県の発電所の写真です。
雪国型の架台はW型の構造をしているのがよくわかると思います。
このようなやり方の他にもパネルの背面部分に筋交いを入れたりする工夫も可能です。
すべての架台をこのように強化していくのは大変です。
しかし架台は「集中的に強化した方がいい場所」とそうでない場所があります。
3.3をよく読んで、まずは集中的に強化した方がいい場所を強化していきましょう。
3-3 防風対策 パネルの吹き飛びを防止する方法
太陽光発電所の被災というと一番大きいのがこの防風による被害ではないでしょうか。
前述しましたが、南向きに角度がついた太陽光発電パネルには南北2つの方向から異なる力が発生します。
南からの風は発電所を押し込む力。
北からの風は発電所を浮き上げるような力です。
もちろん頑丈に作るのに越したことはないのですが風は発電所の端や前列、後列で強く作用します。
逆に言うと、パネルが吹き飛ぶような被害や風で倒壊するような被害は上記画像の色の塗られた「端部アレイ」で発生することがほとんどです。
後から筋交いや金具で強化する場合、この部分を集中的に強化することをお勧めします。
3-4 錆止めとビスの交換
発電所が竣工してから2、3年で出てくるのがこのサビの問題です。
この原因は塩害などの原因もあり得るのですが、ステンレスと鉄など異なる2種類の金属を接触させたことによるものが原因のことがほとんどです。
20年間の事業を考えると、実はあまり問題にならない程度のサビであるとも言えますが、心配なようでしたら外から錆止め剤を塗るのがオススメです。
ホームセンター等で市販されている錆止め剤を購入して塗布しましょう。
これでひとまず安心です。
4 事前に架台の強さを見る方法
これまでは架台の問題点を中心にご紹介してきました。
しかしこれから作る発電所であれば事前に架台の強度や問題点をわかっておきたいですよね。
しかし構造計算書等や設計図面は素人が見ても強さがなかなかわかりません。
ここでは素人がチェックできる項目を上げていきます。
4-1 杭間ピッチを計ろう
一番ポイントとしてわかりやすいのが杭間ピッチです。
杭間ピッチとは杭と杭の間の距離のことを言います。
荷重を支えるもっとも基礎的なパーツが杭ですからこの杭間ピッチはとても重要です。
杭間ピッチを狭くすればするほど架台のパーツは増えていきますからコストは上がっていきます。
しかしコスト重視で杭間ピッチを広げると架台の強度が下がってしまいます。
積雪地であれば2.8m程度に抑えておきたいところ。
4-2 地元の不動産屋さんから「地盤の強さ」を聞く
スウェーデン式サウンディング調査をして引き抜き強度を測定していくというのが本来の姿です。
以下所3〜5万円程度ですから資源エネルギー庁が推奨する「低圧は3箇所程度」を実施しても20万円近辺ということになります。
一方で、まだ申請が通るかもわからない土地でこの金額をかけて調査をしていくというのはなかなか難しいところもあります。
そのような場合、近隣の不動産屋さんなどから地盤のお話を聞いて参考にするのがオススメです。
「この辺の地盤はね・・・」という情報は案外不動産屋さんは詳しいのです。
4-3 架台メーカーを聞き、事前にそのメーカーの案件を見に行く
どうしても不安なのであれば業者さんにお願いして同じ架台メーカーの発電所を見せてもらうという手もあります。
何年か経過しているものであれば錆や歪みもわかります。
一方で、同じメーカーの架台でも経営陣や工場が変わっていたりすると品質が変わってくることもあります。
5 まとめ
- 架台の強さだけでなく地盤の強さも重要
- 架台にはJIS基準のクリアが求められており、最悪認定取消も可能な状態
- 見積書や設計書を見ても架台の強さは素人はよくわからない。せめて実績の多い業者を選ぼう
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